成功する事業承継とは

これまで築いてきた信用や培ってきた技術、ノウハウを引き継いで、今後も事業を発展していってほしい。
経営者の多くは、このように事業承継を望んでいるのではないでしょうか。
しかし、後継者不足に悩み、廃業を決めた企業も中にはいるようです。
ここでは現在の運送業の事業承継の問題点や、成功する事業承継の例について解説します。

事業承継とは?

事業承継とは、会社の資産や株式・人材といった財産を、後継者に引き継ぐこと。引き継がれる資産の中には、設備や車両、 運転資金なども含まれます。また、経営理念や会社の信用、技術、ノウハウ、特許、顧客情報といった形にならないものも引 き継がれます。

なお、「事業承継」とよく似ている言葉に「事業継承」がありますが、2つの言葉は意味が全く異なります。「継承」は、身分や 権利・義務・財産などを受け継ぐこと。「承継」は、地位・事業・精神を受け継ぐことを意味しています。

事業承継の問題点

運送業界をはじめ、現在は多くの中小企業が「事業承継問題」を抱えています。その根底にあるのは、中小企業に多い「同族経営」にも原因があるようです。

中小企業の場合、創業者がリタイヤを考えたとき、事業を子に託すことが一般的でした。特に規模の小さい事業者の場合、その傾向は顕著です。しかし、現在は事業を子に引き継がせようと考えても、拒否されてしまったり、他業界に就職し、そこで落ち着いてしまったというケースもあるようです。そのほか、子供の方は引き継ぐことに前向きであるものの、経営者としての素質に欠けるため、経営者が後継者とするには躊躇しているという例もあります。

そのほか、運送業界自体が停滞していることも理由として挙げられます。社団法人全日本トラック協会によると、2015年の運送業の成長率は4.3%減。インターネット通販の好調などで、一部の宅配便市場は活気がありますが、円安やガソリンなどの燃料高の影響から、国内物流市場は縮小傾向にあります。停滞している業界の仕事を、わざわざ子に引き継がせたくないという思いもあるようです。

中小企業白書によると、国内の中小企業数は約400万社。年間に約29万社が廃業していますが、このうち、後継者不足を廃業の理由としているのが約1/4でした。かつては親族内の承継が9割以上を占めていましたが、近年では親族内承継が中規模企業で約4割、小規模企業で約6割まで減少しています。親族内での後継者の確保は難しいというのが、現在の状況です。

事業承継の方法とは

親族内での後継者確保が難しい場合、他にはどのような方法があるでしょうか。事業承継には子どもや親族に承継する「親族内承継」のほかに、従業員など親族以外の人に承継する「親族外承継」があります。

「親族内承継」は、これまで多くの事業者が選択してきた方法ですが、私情をはさまず、経営者としての資質や適性をよく見極めなければならないという問題があります。子や親族が複数人いる場合は、世間体から「一番年長者の者を選ぶべき」「次男より長男」とするケースも多々見られますが、経営者としての素質を重んじる必要があります。情に流され、適任ではない子や親族を選んでしまったばっかりに、経営が傾いてしまったという例もあります。

子や親族を後継者にする場合は、長期にわたって承継に備えておくことも必要です。経営者が60歳をめどに社長業から退こうと考えているならば、少なくとも50歳になった時点で後継者を決め、約10年間にわたって教育していくことが必要となります。その間に後継者は業務や経営手腕を学び、経営者としての自覚をつけていきます。

それでは、子や親族の中で、後継者が見つからなかった場合は、どうしたらよいのでしょうか。その場合は従業員など親族以外の人に引き継がせる「親族外承継」という方法があります。

経営者としては、これまでの仕事ぶりなどから経営者としての適性を見極めることができます。長年にわたって仕事をこなしてきたため、ひととおり業務に関することは把握しているはずです。そのため、親族内承継のような、長時間かけて業界について教育していく必要もありません。後継者としての育成期間は短縮できるというメリットがあります。

従業員や役員が承継する場合には、役員が株式を買い取って、経営権を取得する「MBO(マネジメント・バイ・アウト)」、従業員が株式を買い取って経営権を取得する「EBO(エンプロイー・バイ・アウト)」という2つの方法があります。

スムーズな事業承継のために

「親族内承継」「親族外承継」のどちらにしても、スムーズな事業承継に必要なこととは何でしょうか。事業承継には複雑なプロセスが伴うものですが、あらかじめ準備をしておくことで、スムーズに事業承継を進めることができます。その反対に、準備不足のままで事業承継を迎えれば、後継者は十分な心構えや知識もないまま、多難な事業運営に関わっていかなければならなくなります。取引先が不信感を抱いてしまうという恐れもあり、中には廃業に追い込まれる可能性も出てくるでしょう。経営者は、事業承継の準備を先送りせずに、社内外の関係者や専門家、公的機関などの協力を受けながら、取り組んでいくことが求められます。

会社の経営がスムーズに受け継がれれば、取引先との信頼関係も維持されます。取引先との信頼関係が維持できれば、事業も維持でき、発展する可能性もあります。事業が安定すれば、従業員の雇用も確保できるため、貴重な人材が流出してしまうというリスクも減らすこともできます。

円滑な事業承継のためには、社外の関係者から事業承継に対する理解を得ることも重要となります。周囲に認められずに後継者に事業を引き継いだ場合、後継者の経営に支障が及ぶことも考えられます。野村総合研究所の調査によると、社内外の関係者から承継への理解を得るために効果的な取組は、小規模事業者では、「後継者が自社で活躍すること」、中規模企業では「後継者を支える組織体制を構築すること」が、最も高い回答となっています。

運送業の事業承継の成功例

ここでは、運送業で成功した事業承継の例を紹介します。

<10年前から準備を進めていたA社>

地方で順調に成長を続けている運送会社A社。事業発展のためには、長いスパンをかけて後継者を育てることが大切だと判断しました。子の一人を後継者として決定。自社とは全く異なる物流会社に就職させ、数年後、自社に呼び戻しました。自社ではひととおりの業務を担当。その間、役員にはせず一社員としての扱いを徹底しました。社長の子どもだからといって特別扱いはしないこと、視野を広げるために他社に修行に出させるといった社長の思いは後継者や社員にも伝わり、スムーズな事業承継につながりました。

<手順を検討し親族間での争いを防いだB社>

B社は、後継者決定後は、自社株を分散させずに後継者に集中させ、スムーズに移転する準備を行いました。事業承継対策は持ち株状況などから十分検討する必要があるため、税理士などの専門家への相談が必須となります。親族間で争いが生じないよう手順を検討することが大事です。

事業承継の成功のポイント

事業承継が成功するポイントと、反対に失敗する事業者が行いがちな点についてご紹介します。

<成功のポイント>

<失敗のポイント>

M&Aによる事業承継

親族や従業員に後継者とするべき人材が見当たらない場合、M&Aによる事業承継を選択するという方法もあります。M&A(エムアンドエー Mergers and Acquisitionsの略)とは、合併や買収により、会社の経営権を相手企業に譲渡することを指します。メリットとしては、「親族内承継」「親族外承継」と比べると、短い期間で事業承継が終了することが挙げられます。すでに相手方は経営のノウハウを持っているので、あらためて後継者に教育を行う必要はありません。

M&Aによる事業承継は、M&Aの仲介業者と相談し、譲渡価格を決め、買収候補企業との交渉に入ります。価格など基本的な条件が合意となった場合、自社の調査や評価に入ります。企業の調査・評価が終わり、最終交渉に合意すると、契約が結ばれ、手続きは完了します。

まとめ

国内物流市場が縮小傾向にある中、運送業界は合理化が勧められています。中小企業同士が統合する動きは今後一段と進んで行くでしょう。運送・物流会社の経営者の中には、M&Aによる事業承継を視野に入れ、相手企業を模索している人もいるかもしれません。

松山会計は関東一円での物流事業に特化した事業再生を得意としています。これまで数多くの企業の再生に携わってきました。企業それぞれの魅力・強みをを最大限に活かし、ベストな選択ができるように支援いたします。最初の相談は無料ですので、現在お困りの方はもちろん、将来的な不安がある方などもお気軽にご相談ください。

【お役立ち知識】

  1. 01 「(株)地域経済活性化支援機構について」
  2. 02 「成功する事業承継とは」
  3. 03 「運送会社の事業承継」
  4. 04 「運送業の借入事情」
  5. 05 「運送(物流)業界のM&A」
  6. 06 「トラックのリースバックの危険性」
  7. 07 「事業再生と企業再生の違い」
  8. 08 「運送業の資金繰り」
  9. 09 「M&Aにおけるデューディリジェンス」