運送会社の事業承継

企業にとって、事業承継は重要なテーマです。
しかし現在は多くの企業が後継者不足に悩むなど、難しいテーマでもあります。
今回は現在の事業承継の問題点、ポイント、スムーズに進む方法などをご紹介します。

事業承継とは?

会社の資産や株式・人材といったこれまで会社が培ってきた財産を、後継者に引き継ぐことを「事業承継」と言います。引き継がれるものは、株式や従業員だけでなく、設備などの事業用の資産、運転資金などの資金、経営理念や会社の信用、技術、特許、得意先、顧客情報といった、目に見えないものも含まれます。

「事業継承」という言葉と似ているのですが、「継承」は、身分や権利・義務・財産などを受け継ぐこと。「承継」は、地位・事業・精神を受け継ぐことを意味しているので、意味合いが異なります。

多くの企業にとって、避けては通れない事業承継ですが、現在、多くの中小企業が「事業承継問題」を抱えています。運送(物流)業界も例にもれず、中には後継者が確保できずに廃業に追い込まれる企業もあるほどです。

事業承継が難しい理由

なぜ、多くの企業が事業承継問題を抱えているのでしょうか。理由としては、少子高齢化により、経営者の年齢が上がっていることが挙げられます。

中小企業は同族経営を行っているところが多く、これまでは、親から子に事業が引き継がれることが一般的でした。しかし、現在は経営を子にバトンタッチしようと考えても、「子が引き継ぎを拒否する」「子が経営者に向いていない」「他業界に転職してしまった」などの理由で、うまく引き継ぎさせられない場合もあるようです。経営者が高齢になり、いざ後継者について考えたとき、事業を引き継いでくれる人材が見当たらないといった声も聴かれます。

中小企業白書によると、国内の中小企業数は約400万社。年間に約29万社が廃業していますが、このうち、後継者不足を廃業の理由としているのが約1/4を占めています。かつては親族内の承継が9割以上を占めていましたが、近年では親族内承継が中規模企業で約4割、小規模企業で約6割まで減少。親族内での後継者の確保は難しいものとなっているようです。

運送(物流)業界は現在、宅配便取扱個数は大きな伸びを見せているものの、国内物流市場は縮小傾向にあります。規制緩和によって、新規参入する企業数も多いため、競争激化によって単価も下落。収益率に関しては、非常に厳しい状況が続いていると言えます。
また、ドライバー不足など、人手がうまく確保できないという深刻な問題もあります。運送業界の事業承継の場合、このようなマイナスの状況を受け入れ、事業を引き継いでくれる人材を発掘しなければなりません。

事業承継の種類

事業承継には大きく2つの方法があります。ひとつは、現在の経営者の子どもや親族に承継する「親族内承継」、もうひとつは、従業員など親族以外の人に承継する「親族外承継」です。「親族外承継」には、M&Aを利用した第三者による承継方法も含まれます。

1.親族内承継

「親族内承継」は、経営者としての資質や適性をよく見極め、誰に承継するかを決める必要があります。子や親族が複数人いる場合、「一番年長者だから」「長男だから」などといった理由ではなく、経営能力の高さで後継者を選ぶべきです。また、長期にわたって承継に備えておくことも必要となります。企業の規模にもよりますが、事業承継は10年前くらいから準備し、その間に後継者は業務や経営手腕を学び、経営者としての自覚をつけていきます。そのくらいの期間があれば、社内外の関係者から事業承継に対する理解を得ることもできるでしょう。

2.親族外承継

「親族外承継」は、親族に適切な後継者候補がいないため、従業員など親族以外の人に承継する方法です。従業員や役員が承継する場合には、役員が株式を買い取って、経営権を取得する「MBO(マネジメント・バイ・アウト)」、従業員が株式を買い取って経営権を取得する「EBO(エンプロイー・バイ・アウト)」という2つの方法があります。

従業員が後継者となる場合、仕事内容や取引先情報など、業務に関することには熟知していることが多いため、後継者としての育成期間は短縮できるでしょう。しかし、経営面での知識や能力を身につけることは必要となってきます。

3.M&Aによる承継

親族や従業員にも後継者の候補がいない場合は、どうしたらよいでしょうか。後継者不足で廃業するという企業も多い中、注目されているのがM&Aによる承継方法です。これは会社を存続し、従業員の生活を守るひとつの選択肢となります。

M&Aを利用した事業承継

M&A(エムアンドエー Mergers and Acquisitionsの略)とは、合併や買収により、会社の経営権を相手企業に譲渡することです。

相手企業は、経営面でのノウハウなどを持っているため、後継者を育成する必要がありません。株式や事業を譲渡するだけなので、資金調達も不要となります。「親族内承継」「親族外承継」と比べると、短い期間で事業承継が終了するのも特徴です。

M&Aによる事業承継は、M&Aの仲介業者と相談し、譲渡価格を決め、買収候補企業との交渉に入ります。価格など基本的な条件が合意となった場合、自社の調査や評価に入ります。企業の調査・評価が終わり、最終交渉に合意すると、契約が結ばれ、手続きは完了します。

国内物流市場が縮小傾向にある中、運送業界は今後も合理化が進められていくことでしょう。人材を確保のために、中小企業同士が統合する動きは今後一段と進んで行くと考えられます。運送・物流会社の経営者はM&Aによる事業承継を見据え、相手企業を模索しているところも増えていくと思われます。

運送業の事業承継の現状と課題

業種別に事業承継の現状と課題を見てみましょう。野村総合研究所が、事業承継時期が0〜9年前の企業について行った調査によると、運輸業の48.5%は「息子・娘」、13.9%が「息子・娘以外の親族」と答えています。

経営者に占める創業者の割合を見ると、運輸業の創業者は約3割であり、事業承継の経験がある企業が多いことがわかります。経営者が50歳以上の運輸業でも、76.5%が「事業を継続させたい」と回答しています。

親族に事業を引き継ぐ際の問題について聞くと、運輸業の65.7%は「問題になりそうなことがある」と回答。親族以外に事業を引き継ぐ際の問題の有無については、運輸業の53.8%は「問題になりそうなことがある」と答えています。

これらの問題点をふまえつつ、事業承継の取り組みを行っているかという質問には、52.5%が「準備をしている」と回答。どのような取り組みを行っているか尋ねたところ、「後継者の資質・能力の向上」「取引先との関係を維持すること」「後継者を支える人材を育成すること」「金融機関との関係を維持すること」が上位に並んでいます。

スムーズな事業承継のために

次に、スムーズな事業承継に必要なことを紹介しましょう。 事業承継には複雑なプロセスが伴うものですが、あらかじめ準備をしておくことで、スムーズに事業承継を進めることができます。その反対に、準備不足のままで事業承継を迎えれば、後継者は十分な心構えや知識もないまま、多難な事業運営に関わっていかなければならなくなります。取引先が不信感を抱いてしまうという恐れもあり、中には廃業に追い込まれる可能性も出てくるでしょう。経営者は、事業承継の準備を先送りせずに、社内外の関係者や専門家、公的機関などの協力を受けながら、取り組んでいくことが求められます。

会社の経営がスムーズに受け継がれれば、取引先との信頼関係も維持されます。取引先との信頼関係が維持できれば、事業も維持でき、発展する可能性もあります。事業が安定すれば、従業員の雇用も確保できるため、貴重な人材が流出してしまうというリスクも減らすこともできます。

円滑な事業承継のためには、社内はもとより、社外の関係者から事業承継に対する理解を得ることも重要です。周囲に認められずに後継者に事業を引き継いだ場合、後継者の経営に支障が及ぶことも考えられます。野村総合研究所の調査によると、社内外の関係者から承継への理解を得るために効果的な取組は、小規模事業者では、「後継者が自社で活躍すること」、中規模企業では「後継者を支える組織体制を構築すること」が、最も高い回答となっています。

まとめ

さまざまな課題が残る事業承継ですが、運輸業の半数は取り組みを行っているという調査結果も出ています。事業を承継させたいという意向も高いようです。後継者となるべき親族や従業員がいないといった場合、M&Aによる承継方法を検討するのもひとつの方法です。

松山会計は関東一円での物流事業に特化した事業再生を得意としています。事業承継や後継者問題などの問題もおまかせください。圧倒的なノウハウで現状を分析し、計画を立案いたします。最初の相談は無料ですので、現在お困りの方はもちろん、将来的な不安がある方などもお気軽にご相談ください。

【お役立ち知識】

  1. 01 「(株)地域経済活性化支援機構について」
  2. 02 「成功する事業承継とは」
  3. 03 「運送会社の事業承継」
  4. 04 「運送業の借入事情」
  5. 05 「運送(物流)業界のM&A」
  6. 06 「トラックのリースバックの危険性」
  7. 07 「事業再生と企業再生の違い」
  8. 08 「運送業の資金繰り」
  9. 09 「M&Aにおけるデューディリジェンス」