運送業の借入事情

インターネット通販が活況である現在、それを支える宅配便市場も大きな伸びを見せています。
しかし、運送業自体の規模は縮小傾向にあるようです。
そのような中、現在の運送業の借入事情や資金繰りはどのような状況となっているのでしょうか。
ここでは、運送業の現状と、業界特有の借入事情について解説します。

運送業の現状

先に説明したように、国内の物流市場は縮小傾向にあります。その原因となっているのが、円安やトラックなどの燃料となる原油高の影響と考えられています。社団法人全日本トラック協会調査によると、2015年の運送業の市場規模は18兆0,161億円(全ト協の経営分析 平成24年度決算版より)。成長率は4.3%減となっています。

しかし、インターネット通販市場の成長に伴い、商品を配達する宅配便取扱個数も大きく伸びています。国土交通省が発表した「平成25年度宅配便等取扱実績関係資料」によると、平成25年度の宅配便取扱個数は、36億3,668万個でした。平成22年度から4年連続の対前年度比増を記録しています。

ただし、通販の「送料無料」や「当日配送」が一般的になってきた今、取扱個数が増えても配送業者の負担が重くなるだけで、なかなか利益に結びつかないという問題が出るようになりました。これは、規制緩和によって配送業者が増加しているため、競争激化により、積荷の単価の利益も下落しているということも関係しています。

特に厳しい経営を迫られているのが、保有車両数の少ない中小事業者です。利益が下がっても車両は保持しなくてはならず、システムへの設備投資も必要です。それらの投資負担が重くなっている中小事業者も出ています。

規模が小さい事業者は赤字割合が高い

全ト協が、全国のトラック運送事業者1976社の事業報告書に基づいて集計した「平成23年度経営分析報告書」では、同23年度の決算は、売上高(営業収益)は1社平均1億8948万円で、前年度の1億9217万円に比べ2.0%の減少となっています。営業利益率はマイナス0.9%で、前年度のマイナス0.6%からさらに悪化。5年連続の営業赤字となりました。貨物運送事業の実際の営業損失は、1社あたり180万円。前年度の140万円に比べ、40万円ほど増えています。

黒字企業の割合は、対象事業者1976社中841社と43%でした。営業黒字より、赤字企業が過半数を占める状況が続いています。

企業の規模によって、赤字の割合は変わってくるのでしょうか。規模別で見てみると、「10台以下」が63%と、赤字企業割合が6割を超えています。「11台〜20台」が同60%、「21台〜50台」が同53%。保有する車が50台以下という事業者の半分以上は赤字です。規模が小さい事業者ほど、赤字割合が高く、経営状況は逼迫していることがわかります。

さらに、営業利益率1%、対売上高燃料費比率5%の事業者では、燃料の平均調達単価が20%を超えて上昇しています。原油高などの影響で、営業利益率は赤字に転落することが予想されます。

運送業の資金繰り状況

運送には燃料費・有料道路料金の支払いなどに、現金が必要であることが多くあります。しかし中には、キャッシュフローがうまくいかず、こげついてしまうケースも多々あるようです。ここでは、運送業特有の資金繰り状況について解説します。

1.回収までの期間がかかるケース

現在、成長を続けているインターネット通販関連の業務は、受注から資金回収までの期間が長くなっています。商品配達のあとに、商品料金の引き落としやコンビニ決済などがあるため、それらがすべて完結しないと回収ができないためです。
しかし、運送業者は回収する前にも、配送のための燃料代・人件費・その他費用を負担しなければなりません。インターネット通販サイトの中には、受注から入金まで数カ月かかるものもあります。その間に資金繰りが滞ってしまう事業者もあるようです。

2.繁忙期に出費がかさむケース

繁忙期には発注量が増えるため、取引先からの急な要請に、トラックを増車して受注するというケースもあります。トラックだけではなく、ドライバーの増員も必要で、そのための費用を捻出しなければなりません。しかし、増車・増員したとしても、「増車したが、思ったほどの受注量ではなかった」「受注するタイミングが少し先にずれた」などのアクシデントが発生する場合もあります。その間もトラックの維持費や増員した人員の人件費はかかります。

3.安全のための経費

そのほか、安全のための経費も必要です。例えば、車両の整備・点検費用など。万一に備え、万全の体勢を整えておいたとしても、事故やトラブルは免れません。車両が壊れた場合は修理費用が必要になるし、場合によっては、車両を買い替える必要もあるでしょう。予測もしなかった出費がかさみ、資金繰りが間に合わないケースもあります。

4.人件費の高騰

人件費の削減が進まないという問題もあります。運送業は若い人材の確保が難しく、従業員の平均年齢が高いため、その分賃金も高くなるからです。ドライバーの定着率が低い事業所の場合は、安定した経営のために、常に人材確保のための費用も必要になるでしょう。また、事業所によっては、特に繁忙期は即日払いのドライバーを受け入れる場合もあります。そのための現金も用意しておかなければなりません。

事業規模が大きく、体力のある企業であれば、回収までの期間は持ちこたえることができるでしょう。しかし、赤字経営が続く中小企業の場合は、これらの出費が立てつづけに発生すると、資金繰りが大変困難になることが予想されます。

資金繰りを安定させるには

取り扱い商品によっては、受注から回収までスムーズに進むものもありますが、それでもトラックなどの車両の維持、ドライバーの確保、安全のための出費には、常に備えておく必要があります。ガソリンなどの燃料代は、売掛金の入金日前に支払期日が来てしまうため、繁忙期などは特に注意が必要でしょう。

運送業のキャッシュフローを円滑にするには、小口の現金収入を増やす必要があります。回収までがスピーディな受注を切らさないようにすれば、それだけ手元に現金収入が残ります。その上で、効率よく配送できる仕組みを構築するなどの工夫を行います。

また、車両の保有台数が多い事業者の場合は、使わないトラックや使わない設備などを、できるだけ少なくすることも必要です。「いつか必要になるかもしれない」と不要な設備やトラックを所有していても、眠った状態になっていると、単なる固定資産となり、その分維持費もかかります。

今、ある設備や車両を最大限活用して、小口でも現金収入につながる方法を考えていきましょう。回収までに時間がかかる大口注文とうまくバランスを取りながら、こげつかない資金繰りを考える必要があります。

資金繰りの不安を減らせるM&A

中小事業者の中には、投資負担が重く、資金繰りがうまくいかないというケースもあるでしょう。先に説明した小口の現金収入を増やすという方法もありますが、M&Aという方法もあります。

M&A(エムアンドエー Mergers and Acquisitionsの略)とは、企業の合併や買収(広くは資本参加も含まれる)のこと。中小企業の後継者問題の解決や、新たな付加価値を高める手段のほか、資本を呼び込む方法としても期待が寄せられています。

売り手のメリットとしては、借入金の個人保証や担保を解消できることが挙げられます。また、相手方企業の傘下で、安定的・効率的な事業経営ができるのも魅力と言えるでしょう。運送業においてもM&Aは活発に行われており、2014年には鴻池運輸が医薬品輸送に強い九州産交運輸を買収。2016年には日立物流が佐川急便を傘下に持つSGホールディングスと資本業務提携契約を締結しています。

大企業だけではなく、中小事業者のM&Aも活発です。他業種の企業と手を取り合うことによって、停滞気味の運送業界に活路を見出すケースも多くみられています。

まとめ

トラックの維持費やドライバー確保のための費用といった運送業特有の状況に加え、回収までに時間がかかるインターネット通販の増加など、運送業の資金繰りは大変厳しいものであるようです。小規模の事業者の半数以上が赤字経営であるということから、その大変な状況がうかがえます。

赤字経営であることや、後継者問題などから、廃業を考える事業所もあるようですが、これまで築いてきた信用や独自のノウハウ・技術を承継しないのは大変もったいないことです。しかし、中には何とか手を打ちたくても、まず最初はどうしたらよいのか悩んでいる経営者も多いのではないでしょうか。

松山会計は関東一円での物流事業に特化した事業再生を得意としています。圧倒的なノウハウで現状を分析し、計画を立案いたします。最初の相談は無料ですので、現在お困りの方はもちろん、将来的な不安がある方などもお気軽にご相談ください。

【お役立ち知識】

  1. 01 「(株)地域経済活性化支援機構について」
  2. 02 「成功する事業承継とは」
  3. 03 「運送会社の事業承継」
  4. 04 「運送業の借入事情」
  5. 05 「運送(物流)業界のM&A」
  6. 06 「トラックのリースバックの危険性」
  7. 07 「事業再生と企業再生の違い」
  8. 08 「運送業の資金繰り」
  9. 09 「M&Aにおけるデューディリジェンス」