運送(物流)業界のM&A

企業の合併や買収(広くは資本参加も含まれる)のことを指す「M&A(エムアンドエー Mergers and Acquisitionsの略)。
日本のM&A件数は25年間で約10倍に増えており、増加傾向にあります。
運送(物流)業界も例に漏れず、M&Aは活発化。
経営者にとって、M&Aは重要な経営手法として認知されていますが、
中小企業の後継者問題の解決や、新たな付加価値を高める手段、資本を呼び込む方法としても期待が寄せられています。
ここでは、運送(物流)業界のM&Aの現状やメリットなどをご紹介します。

運送業の現状

社団法人全日本トラック協会によると、2015年の運送業の市場規模は18兆0,161億円(全ト協の経営分析 平成24年度決算版より)となっています。成長率は4.3%減。円安やガソリンなどの燃料高の影響から、国内物流市場は縮小傾向にあります。

しかし、縮小傾向がある中でも、唯一伸長を見せているのが、通信販売(インターネット・テレビ等)に伴う宅配便市場です。国土交通省による「平成25年度宅配便等取扱実績関係資料」では、平成25年度の宅配便取扱個数は、36億3,668万個。平成22年度から4年連続の対前年度比増を記録しています。

伸び続ける通販市場ですが、運送業の増収につながるかといえば疑問が残ります。通販の「送料無料」や「当日配送」が消費者に浸透しつつある現在、運送業者への負荷が大きくなります。取扱個数が増えてもなかなか利益に結びつかないという問題を抱えているからです。さらに規制緩和によって配送業者が増加しているため、競争激化により、積荷の単価の利益も下落しています。

運輸業の中小事業者の現状

このような中、厳しい経営を迫られているのが、保有車両数の少ない中小事業者です。「平成24年度経営分析報告書」(全日本トラック協会より)を見ると、保有車両数が50台以下の事業者は約6割が営業赤字となっています。

原因は、上記に挙げた利益幅が少ない宅配便市場が増えていることもありますが、安全整備にかかるコストや燃料価格の上昇、高速道路料金の値上げなどが考えられます。企業努力だけではどうにもできないさまざまな要因が、中小企業の経営を圧迫していると言えるでしょう。

また、現在は消費者のニーズが多様化していますが、中小事業者の中には、それぞれのニーズにあったサービス展開を行うのに経営資源が不足するケースも見られます。利益が下がっても車両やシステムへの設備投資は必要なため、投資負担が重くなっている企業もあります。

また、深刻なのがドライバーなどの人材不足です。現在も、ドライバーが定着しないといった人材不足でうまく業務が回せない状況になっている企業も多いのですが、今後はさらなる人材不足が懸念されています。現在、40歳以上の中高年ドライバーが占める割合は約7割。若手のドライバーが育成しないまま、近いうちに中高年ドライバーが一気に退職してしまう可能性も考えられます。鉄道貨物協会の調査では、2020年には10万人以上のドライバーが不足する可能性があると推計しています。ドライバーの確保・育成・安定した雇用など、課題は多く残っています。

運送・物流業界のM&Aの現況

運送・物流業界の厳しい状況を受けて、業界内でも業務提携が活発化しています。
一例を挙げると、2007年には、日本郵政公社と日本通運が業務提携を締結。2009年には、トナミ運輸が商船三井ロジスティクスが業務提携を結びました。同じく2009年には、福山通運が王子運送と業務提携。最近ですと、2016年には日立物流が佐川急便を傘下に持つSGホールディングスと資本業務提携契約を締結しています。これにより、日立・佐川物流は、ヤマトホールディングスを抜き、国内の陸運業界の売上高2位となりました。

そのほか、運送・物流業界の主なM&Aについてご紹介します。

鴻池運輸

2014年に医薬品輸送に強い九州産交運輸を買収。両社で効率的な配送システムを構築し、事業拡大につなげていくとしています。

日本通運

2013年に、パナソニックの連結子会社であるパナソニック ロジスティクスの普通株式の一部を日本通運に譲渡。

レンゴー

2011年、山陽自動車運送の発行済株式の51%を阪神電気鉄道より取得し、子会社化。

4.特定組合出資によるファンド出資業務

地域活性化ファンドや事業再生ファンドに対して、地域経済活性化支援機構(REVIC)がLP(有限責任組合員)として出資を行います。この業務は平成26年5月に行われた法改正に伴って新たに付加された業務です。機構による出資が民間への呼び水となることが期待されています。出資実績は、地域経済活性化支援機構(REVIC)のHPに公表されています。

DHLサプライチェーン

2013年、コニカミノルタホールディングスの物流業務を受託。、コニカミノルタ物流より事業を継承し、国内拠点等を引き継いでいます。

物流以外の付加機能を高めるためのM&Aが活発化

また、運送・物流会社の経営者の多くが引退の年齢を迎えていることから、後継者問題や事業承継問題、従業員の雇用維持ができるM&Aも増加。特に3PL(サードパーティー・ロジスティクス)についての買収ニーズが非常に強くなっています。3PLとは、荷物の配送だけではなく、調達物流、工場内物流、在庫の管理、輸配送管理、組み立て、梱包、商品の返品や修理品、システム構築なども一括で請け負うアウトソーシングサービスのことを指します。

3PLを目指したM&Aの例をいくつかご紹介します。

日立物流

日立物流は、資生堂物流サービス、タカノフーズの子会社であるタカノ物流サービス、内田洋行の子会社オリエント・ロジなどを買収。2013年3月には日立電線の子会社である日立電線ロジテックも傘下に収めました。

センコー

輸送、保管、流通加工などのサービスを提供するセンコーは、2013 年に家庭紙卸売のアストを買収しました。これにより、製造から販売までワンストップのビジネスモデルを構築することが可能となります。

三菱倉庫

国内外拠点の共有化や輸配送機能の相互活用を含め、補完関係は高いとの考えから、2010年に三菱倉庫が富士物流を買収。両社の収益拡大および効率化・コスト改善の双方の観点から、大きな相乗効果が期待されています。

郵船海陸運輸

2012年、北日本倉庫港運と合併しました。北日本倉庫港運を存続会社とし、新会社名は「ノーススタートランスポート」として新たなスタートを切りました。



今後も、さまざまな業界の物流ノウハウと付加機能を取り入れる3PL化を目指すM&Aは活発化していくと考えられます。

M&Aのメリット 譲渡企業のメリット

M&Aを行うことにより、どのようなメリットがあるのでしょうか。
譲渡企業のメリットとしては、「従業員の雇用を維持できる」ことが挙げられます。事業活動を縮小したり、やむなく事業をたたんだ場合は、経営者はこれまで事業を支えてくれた従業員の再雇用先について考える必要も出てきます。しかし、人材ごと譲渡となれば、従業員の雇用を維持することができます。

また、大手企業や有力グループの傘下で、安定的な事業を経営できるのもメリットでしょう。そのほか、「個人保証や担保を外せる」ことや、「流通機能全般を一括して請け負う3PLなどの特徴ある物流システムを構築することができる」こともメリットといえます。
しかし、何よりも大きいのは、「後継者問題を解決できる」ことではないでしょうか。何らかの理由で後継者が育たなかったり、継がせられないといった場合でも、創業当時から今まで築いたノウハウや技術をM&Aにより存続させることができます。

M&Aのメリット 譲受側のメリット

譲受側のメリットとして考えられることは何でしょうか。
まず挙げられるのは、「技術・資格を有する優秀な人材を確保できる」ことでしょう。すでに高度な知識や技術・資格を持っている優秀な人材を引き継ぐことができるのですから、最初から人材を確保し、育てるといったコストを大幅に削減することができます。
また、新たな事業基盤を拡大できるため、実働率や積載効率を向上させることもできます。車両・設備といったインフラや、システムお一括で取得できるので、設備投資やシステム構築のコストを削減することも可能です。譲渡企業側の顧客も引き継がれるため、新規顧客が獲得でき、収益の増収も見込めます。

これまで、大手企業のM&Aの例を紹介してきましたが、中小企業のM&Aも増えています。先に説明した通り、付加価値を高めるM&Aも増えており、異なる業種や違った価値を持つ企業に譲渡・譲受することで、停滞している業界の中で生き残る可能性が高くなるからです。

まとめ

国内の運送業・物流国内物流では、業界再編の傾向が高まっています。今後も他企業との連携やM&Aにより、活路を見出す企業は増加していくことが予想されています。

松山会計は関東一円での物流事業に特化した事業再生を得意としています。これまで数多くの企業の再生に携わってきました。企業それぞれの魅力・強みをを最大限に活かし、ベストな選択ができるように支援いたします。
最初の相談は無料ですので、現在お困りの方はもちろん、将来的な不安がある方などもお気軽にご相談ください。1人で悩みを抱え込む前に、まずは相談することで将来への道筋や可能性が見えてくるはずです。ぜひご相談ください。

【お役立ち知識】

  1. 01 「(株)地域経済活性化支援機構について」
  2. 02 「成功する事業承継とは」
  3. 03 「運送会社の事業承継」
  4. 04 「運送業の借入事情」
  5. 05 「運送(物流)業界のM&A」
  6. 06 「トラックのリースバックの危険性」
  7. 07 「事業再生と企業再生の違い」
  8. 08 「運送業の資金繰り」
  9. 09 「M&Aにおけるデューディリジェンス」