トラックのリースバックの危険性

運送業を営むにあたって、必要不可欠なのはトラックなどの車両やそれを運転するドライバーです。
企業にとっても大きな資産となるトラックですが、
現在、資金繰りの策として「リースバック」を選択する運送事業者も増えています。
ここでは、リースバックのメリットとデメリットを解説します。

トラック事業者の経営事情

リースバックについて解説する前に、まずは現在のトラック事業者の経営状況について説明しましょう。全ト協が、全国のトラック運送事業者1976社の事業報告書に基づいて集計した「平成23年度経営分析報告書」によると、同23年度の決算は、売上高(営業収益)は1社平均1億8948万円でした。前年度の1億9217万円に比べ2.0%の減少となっています。営業利益率はマイナス0.9%で、前年度のマイナス0.6%からさらに悪化。5年連続の営業赤字となりました。貨物運送事業の実際の営業損失は、1社あたり180万円で、前年度の140万円に比べて増加しています。

規模別で見てみると、「10台以下」が63%と、赤字企業割合が6割を超えています。「11台〜20台」が同60%、「21台〜50台」が同53%。保有する車が50台以下という事業者の半分以上は赤字です。規模が小さい事業者ほど、赤字割合が高く、経営状況は深刻です。

厳しい経営状況が続いている中でも、燃料費・有料道路料金の支払い、従業員への給与支払いなど現金が必要であることが多く、資金繰りに奔走する運送会社も多く見られます。しかし、受注から回収までにかなり時間がかかるケースも多く、その間にこげついてしまう場合もあるようです。

このような中、運送業の資金繰りの一つの手法として、増えていると言われているのが「トラックのリースバック」です。

資金調達の新手法「リースバック」

厳しい状況を打破するために、資産であるトラックの一部を売却して現金収入を得て、それを運転資金に充てるという方法を考える経営者もいます。しかし、一時的にはしのげるものの、トラックの台数が減った事で、作業効率が落ちてしまうことも考えられます。会社の売上にも影響するでしょう。トラックを買い戻すとしても、売却した額よりも高い額になってしまい、結果的には損をしてしまう可能性も高いのです。

そこで注目されているのが「リースバック」です。これは、トラックをリース会社に売却した後、改めてリース契約を結ぶ方法のこと。毎月のリース料金はかかりますが、トラックを売却した利益は手元に残り、中古トラックは今まで通り使うことができるのですから、厳しい経営状況を強いられている運送事業者にとっては魅力的に映るでしょう。

リースバックのメリット・デメリット

リースバックのメリット・デメリットをそれぞれみていきましょう。

リースバックのメリット

リースバックの利点で最も大きいのが管理業務の効率化です。車両に関する費用がリース料に一本化されるので、コスト管理が容易になります。古い車両の入替タイミングを持つことなく、車両を使い続けながら、リース化することも可能です。

リースのプランにもよりますが、メンテナンスリースの場合は、車両代金や登録諸費用、
自動車税、自動車重量税、各種保険料や点検整備、消耗部品、修理などがすべて一本化されます。これまですべて個別に行ってきた管理をリース会社で行ってくれるため、負担が減るだけではなく、管理業務にまつわるコスト削減もできます。

また、リースへの切り替えの手続きをしている最中も、車両は継続して利用できるので、業務に支障はありません。

そのほか、トラックという固定資産を流動資産にし、いつでも資金を引き出せるようにすることで、自己資本比率を増やすといった決算書をよくするための利点も挙げられます。トラックは、原則として帳簿価格(未償却残高)でリース会社が買い取るため、経理処理上の車両売却損は発生しない仕組みになっています。

リースバックのデメリット

デメリットとしてまず挙げられるのが、原則的に契約期間内での解除ができないことです。途中で契約解除をしたい場合は、中途解約金を払う必要が出てきます。また、リース先の業者が倒産した場合や、契約が変更になった場合は、トラックが使えなくなります。

リースバックの危険性

これまで、リースバックのメリット・デメリットを紹介してきましたが、現在、違った形の問題点も指摘されています。

リースバックは、車両を売却したことによって、売却益が生じます。前述したように、それを目的に運転資資金確保のためにリースバックを行う運送会社が近年、目立ってきています。
リース会社に売却するという従来のリースバックを行っているのなら問題はありませんが、中にはリース会社からの信用を得られなかった運送会社が、自社の車を他社に名義変更してもらってリースバックを頼むケースも少なくないといいます。

<事例>

経営状況がよくない運送会社A社。資金繰りが悪化し、様々な支払いも滞りがちになったときに、当座の資金を確保しようとリースバックを検討しました。しかし、銀行からも融資を断られている状態のA社はリース会社からの信用も得られず、リースバックを断念。そのようなときに、同業のB社から、リースバックを代行するという話を持ち掛けられました。まず、A社はトラックをB社に売却。B社はそのトラックを自社に名義変更した上で、改めてリース会社とリースバック契約を結びます。B社はA社にトラックをリースする形をとり、A社は月々のリース料を支払っているという状況です。

今回の問題点は、売却して他社名義になったトラックを引き続き使用することで、名義貸し行為に該当する可能性が十分に考えられるということです。また、中には資金繰りに困窮する事業者の足元を見るような悪徳な業者の例も報告されています。実際の価値よりも低い価格でトラックを買い取ったうえ、事業者には実際のリース料金よりも高めの料金を請求するといったケースです。いくら当座の資金が手に入るからと言って、所有していたトラックを安く買い叩かれ、その上リース料金も水増し請求されるのでは、長い目で見て大きな損につながりかねません。

また、リース会社に払うリース金利も高く、それが負担になっているという場合もあります。一部の運送会社からは「(一時的にはしのげるかもしれないが)リースバックをすること自体、自分の首を絞めている。再建は望めない」という意見も出ています。

リ資金繰りの不安を減らせるM&A

中小の運送業事業者の中には、資金繰りがうまくいかず、困っているというケースもあるでしょう。リースバックを検討している事業者もあるかもしれませんが、前述したようなデメリットもあります。そこで新たな選択肢として考えられるのが「M&A(エムアンドエー Mergers and Acquisitionsの略)」です。

M&Aは、企業の合併や買収(広くは資本参加も含まれる)のことを指します。大企業の合併のイメージが強いかもしれませんが、中小企業の後継者問題の解決や、新たな付加価値を高める手段のほか、資本を呼び込む方法としても期待が寄せられています。

売り手のメリットとしては、借入金の個人保証や担保を解消できることが挙げられます。また、相手方企業の傘下で、安定的・効率的な事業経営ができるのも魅力と言えるでしょう。運送業においてもM&Aは活発に行われており、2014年には鴻池運輸が医薬品輸送に強い九州産交運輸を買収。2016年には日立物流が佐川急便を傘下に持つSGホールディングスと資本業務提携契約を締結しています。

まとめ

企業の車両の業務効率化を狙って開発された「リースバック」ですが、本来の目的とは異なり、資金繰りの手段として活用する運送業が増えています。トラックはそのまま使用でき、現金も手に入ると聞くと魅力的に感じますが、毎月リース料金を支払う必要もあり、根本的な解決にはつながらないようです。

松山会計は関東一円での物流事業に特化した事業再生を得意としています。圧倒的なノウハウで現状を分析し、計画を立案いたします。現在、トラックのリースバックを利用している事業者様も、資金繰りに悩んでいる事業者様も、まずはお気軽にご相談ください。
最初の相談は無料です。現在お困りの方はもちろん、将来的な不安がある方などもお気軽にご相談ください。

【お役立ち知識】

  1. 01 「(株)地域経済活性化支援機構について」
  2. 02 「成功する事業承継とは」
  3. 03 「運送会社の事業承継」
  4. 04 「運送業の借入事情」
  5. 05 「運送(物流)業界のM&A」
  6. 06 「トラックのリースバックの危険性」
  7. 07 「事業再生と企業再生の違い」
  8. 08 「運送業の資金繰り」
  9. 09 「M&Aにおけるデューディリジェンス」